【書評】ネガティブな心の声の制御方法|『Chatter(チャッター): 「頭の中のひとりごと」をコントロールし、最良の行動を導くための26の方法』

何か自分の身に嫌なことが起こったときに

「あのときああしとけばよかった・・・」
「自分は悪くないはずなのになぜこんな目にあうんだ!」

といつまでも無意味に過去の出来事を反芻してしまい、目の前のやるべきことにに集中できない。。

何か新しい挑戦をするときに

「もし失敗してしまったらどうしよう」

といつまでも考えてしまって中々新たな一歩を踏み出せない。。

このような経験したことはありませんか?

この本は、このような誰しも経験したことがあろう心の声の暴走を止めるための手段を最新の心理学研究を元に網羅的に教えてくれます。

しかもそれらの方法は、いわゆるマインドフルネス・瞑想と言われるような他の手段と比べて特別なトレーニングも必要なく簡単な点が素晴らしいところ。

本書のキーメッセージと感想をまとめてみたので気になる方はぜひ読んでみて!

書籍概要

  • 書籍名:Chatter(チャッター): 「頭の中のひとりごと」をコントロールし、最良の行動を導くための26の方法
  • 著者:イーサン・クロス (鬼澤 忍 翻訳)
  • 出版年月:日本語訳版 2022年11月(原作 2021年1月)
  • ページ数:314ページ
  • 内容:時に人をネガティブな感情の渦に陥れる「頭の中のひとりごと」を制御する方法の紹介

世界的な心理学の権威が送る、自らの心のコントロールに悩める人々を救うためのツールボックス

この本の著者であるイーサン・クロス氏は、米ミシガン大学とロス・スクール・オブビジネスの有名教授であり、ホワイトハウスの制作議論にも参加する、心のコントロールに関する世界的第一人者です。

そんなイーサン氏が本書籍を執筆するに至ったきっかけは、自身の研究成果に基づいた心のコントロール方を教えている授業の受講生からの以下の一言でした。

「私たちはこの学期のあいだ中、気持ちを上向きにする方法、成功に近づく方法を学んできました。でも、私たちのほとんどは今年、卒業します。どうしてもっと早く、こういう知識が本当に役立つ時期に、誰も教えてくれなかったのでしょう?」

引用:イーサン・クロス著・鬼澤 忍 翻訳『Chatter(チャッター): 「頭の中のひとりごと」をコントロールし、最良の行動を導くための26の方法

この言葉に思考が停止するほどの衝撃を受け、若い人たちに自身の持つ心のコントロールに関する知見を広めたいと考えたイーサン氏が用意したのがこの本なのです。

チャッター(Chatter)とは循環するネガティブな思考と感情

本のタイトルにもなっているチャッター(Chatter)とは、一言でいうと循環するネガティブな思考と感情です。

「あのときああしとけばよかった・・・」
「明日の会議では上手く立ち回れるだろうか・・・」

時として私たちはこのような際限のない後悔や不安といったネガティブな思考と感情に必要以上に囚われてしまい、やるべきことや自分自身を見失ってしまいます。

イーサン氏はご自身の体験からこのチャッターの制御方法に関して強い関心を持ち長年研究を続けて来られました方であり、この本はその集大成として全部で28個のチャッターを制御するツールが紹介しています。

研究者であるイーサン氏らしく、心理学の先行研究や事例を引用しながらチャッターとは何なのか・なぜチャッターは時に有害なのか・どうすればチャッターを制御できるのかといった点を一つづつ丁寧に解説していき、チャッターに関する研究の進展や知見の深まりを追体験する様な形で進んでいく本の構成になっています。

そして最後の巻末には、その集大成である28のツールが一覧として再掲されます。

そのため、初読ではチャッターや各ツールの背景に関して理解を深めるる読み物として、以降はチャッターに悩まされたときにすぐに見返せるツールボックスとしてこの本は活用できるのです。

レビュー内容

チャッターを制御し、人類の覚醒時間の多くを占める「内なる声」との対話を有意義なものとするための手段は「距離を取る」「他者の手を借りる」「環境の力を活用する」の3つである

ジェイゾーの考えるこの本のキーメッセージは以下の3つです。

  • 人間は覚醒時間の多くを「内なる声」に支配される精神的生物であり、その声は生産性を高める「知恵」となる場合もあれば、集中を阻害しストレスを生じさせる「呪い」(=チャッター)となる場合もある
  • チャッターへの有効な対抗策の一つは「距離を取る」ことである
  • 他者や環境の力を借りることもチャッターへの有効な対抗手段である

それではこれらのキーメッセージについて説明しつつ本の内容を一部紹介していきます。

人間は覚醒時間の多くを「内なる声」に支配される精神的生物であり、その声は生産性を高める「知恵」となる場合もあれば、集中を阻害しストレスを生じさせる「呪い」(=チャッター)となる場合もある

「内なる声」は時にチャッターとなり、私たち自身に過大なストレスを与えたり、ネガティブな思考の渦に私たちを陥れて今やるべきことに向き合うを阻害したりするというのは先述の通りです。しかしだからと言ってこの「内なる声」が絶対的に悪だというわけではなく、むしろ生産性を高めるためには必要なものであるともこの本は主張しており、「内なる声」が有用な役割を果たす具体例として以下のようなものがあげられています。

ワーキングメモリー(作業記憶)

例えば皿洗いをしながらその日に予定されている会議に関して考える、といった場合に「内なる声」はこの使い方をされています。

脳内シュミレーション

例えば明日のプレゼンでどのように話そうか考える、といった場合に「内なる声」はこの使い方をされています。

仮に「内なる声」を完全に悪だと割り切り消してしまったら(本の中では事故によりそのような症状に陥った方の事例についても語られています)、上記のようなこともスムーズに出来なくなってしまう。。。それはそれで、困りますよね。

つまり、重要なのは『如何に「内なる声」との対話を行わないか』ではなく、『如何に「内なる声」との対話を効果的なものにするのか』であるというのがこの本のスタンスです。ここがマインドフルネス・瞑想法と言われる類のものと大きく異なる点です。

この本によると一般的な人々は、実に目覚めている時間の1/3~1/2にもあたる時間を「内なる声」との対話に費やしているそうです。それだけの時間を使っている「内なる声」との対話を効果的なものに出来たらどれだけ自分の人生にプラスなのかは言うまでもありませんよね。その方法論がこの本では紹介されています。

チャッターへの有効な対抗策の一つは「距離を取る」ことである

この本の中で紹介されているチャッターに対抗するためのツールの中で一番手軽かつ自分だけで完結するツールがこの「距離を取る」ことです。

チャッターはストレス原因となっている特定の問題にフォーカスしすぎることで起こる現象で、視野を狭めてしまい他の解決策が思い浮かびづらい状態に私たちを追い込みます。イメージとしては以下のような感じです。

イーサン・クロス著・鬼澤 忍 翻訳『Chatter(チャッター): 「頭の中のひとりごと」をコントロールし、最良の行動を導くための26の方法』を元にジェイゾー作成

そのため、そのストレス原因から距離を取って冷静な視点で考えることにより逆に思考の視野を広げることが、チャッターによる負のスパイラルから抜け出すための対抗策となるのです。

イーサン・クロス著・鬼澤 忍 翻訳『Chatter(チャッター): 「頭の中のひとりごと」をコントロールし、最良の行動を導くための26の方法』を元にジェイゾー作成

では具体的に「距離を取る」ということはどのような事かというと、本書の中では以下のようなツールが紹介されています。

  • 第三者視点:ネガティブな出来事を脳内で回想するときに、一人称視点で見るのではなく例えば壁にとまったハエのような第三者からや上空から俯瞰した視点から観察することで、その出来事から心理的距離を取ることが出来ます。
  • タイムトラベル:1か月後、1年後、10年後、などの未来の自分が今を振り返って現在抱えている悩みをどう感じるのかを考える、つまり時間的な距離を取ることで今の問題が大したことではないと気づける。
  • 大局的に見る:チャッターに襲われるときは視野が狭まっていることが多いので、自分のこれまでに経験した辛い出来事と比較したり、人生や世界という大きな枠組みで考えたりする。視野を広くすることで、ネガティブな感情が薄れ、新たな解決策が思い浮かびやすくなる。
  • マイネーム・セルフトーク:ネガティブな出来事に関して自問自答するときには一人称を自分の名前とすることで自身の問題を客観的視点で考えやすくなります。(例:ジェイゾーは今日のプレゼンをどう話すべきか?)

他者や環境の力を借りることもチャッターへの有効な対抗手段である

この本の中では他のチャッターに対抗させる手段として、周囲の人の力を借りたり(例えばSNSの上手な使い方)、環境の力を活用したり(例えばチャッターを低減する住環境の整え方)、迷信やおまじないの力を借りる方法も紹介されています。

自分自身だけで完結できる「距離を取る」タイプのツールと比べて手軽さには欠けますが、特に周囲の人の力の上手な借り方については知っておくと本当につらい時に助けになると思います。

最後に:チャッターへの対抗策を得ることは人生の生産性を激増させる

上記の通り私たちは覚醒時間の実に1/3~1/2を「内なる声」と対話しています。そしてストレスがトリガーになるというチャッターの特性上、私たちが本当に生産的な思考を求められる大事な局面であればあるほど、そのストレスによってこの「内なる声」は手助けをしてくれる「知恵」ではなく、ストレス助長し思考を阻害するチャッターとなってしまうのです。

しかし、この本で紹介されているツールはこんな不条理な脳の仕組みから私たちを解放し、苦境でも冷静に判断し問題を解決できる理想的な人間に変えてくれます。

ジェイゾー自身もこの本のツールを知るまでは、些細なトラブルからネガティブな感情に支配されて目の前の仕事に集中できないようなことは多々ありましたが、このツールのおかげでそれを防ぐことが出来るようになりました。その”効き”は本当に抜群でして、冒頭に紹介した大学生同様に「もっと早く知りたかった」

この記事の中でざっくりとは内容を紹介しましたが、その背景だったりをきちんと理解した方がツールの”効き”もよくなると思うので、興味ある方はぜひご一読ください。

ここまで長い記事を読んでいただきありがとうございました。

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